hitoriの卵焼き

砂糖味、塩味、しょうゆ味、不思議な味。あなたはどれが好きかな。

ももたろう

   ももたろう

 

 昔、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日、おじいさんが畑のそばを歩いていると、桃の木の根元に赤ん坊が置かれていました。かわいそうに思ったおじいさんは、赤ん坊を家につれて帰りました。おじいさんとおばあさんは、赤ん坊をももたろうと名づけました。


 大きくなったももたろうは、いたずらばかり。おじいさんとおばあさんは困ってしまいました。村の人たちも困っていました。いつも畑を荒らされてばかり。


 そこへ旅のお坊さんが通りかかりました。話を聞いたお坊さんは、ももたろうを見つけると言いました。


 「ももたろうさん、元気があまっているなら、鬼が島に行ってはどうですか。そこのお殿様が、鬼たちがいつも喧嘩ばかりするので困っているようです。ひとつ、手助けをしてみませんか」


 それを聞いたももたろうは、鬼が島に行くことにしました。思いっきりあばれてやろうと思ったのです。


 ももたろうが鬼が島に行くと言うので、喜んだのはおじいさんとおばあさん。きびだんごをたくさん作って、ももたろうに持たせました。村はずれで、お坊さんに会ったももたろうは、手紙を預かりました。


 「鬼が島のお殿様に手紙を渡してください。ももたろうさんが頼りになる人だと書いておきました」


 でも、本当は違うのです。ももたろうを懲らしめてほしいと書いてあったのです。
 なにも知らないももたろうは、手紙を懐に入れ、歩き始めました。


 しばらく行くと、犬が歩いていました。
 「おお、犬だ。ちょうどいい、ついて来い」


 ももたろうは無理やりに犬を引っ張って、連れて行きました。茶店のわきにあった荷車を見つけると、犬に引かせました。ももたろうはと言うと、荷車に乗って、きびだんごを食べているのです。


 しばらく行くと猿がいました。
 「おお、ちょうどいい、ついて来い」


 ももたろうは、猿が逃げないように紐で結んで、荷車を押させました。


 しばらく行くと、キジがいました。
 「おお、ちょうどいい、ついて来い」


 ももたろうは、キジの足に紐をつけて、逃げないようにしました。キジを荷車の縁に止まらせ、羽をバタバタとさせました。
 「うちわの代わりにちょうどいいな」


 三匹はももたろうに言いました。
 「きびだんご、一つください」


 いじわるなももたろうは、きびだんごを食べながら知らん顔。


 鬼が島にわたる船に乗っても、ももたろうは何もしません。犬と猿にこがせて、キジには舵取りをさせました。


 鬼が島につくと、ももたろうは大きな声をあげました。
 「ももたろうが鬼退治に来たぞ」


 ももたろうは鬼を探しました。すると、畑仕事をしている鬼を見つけました。
 「喧嘩ばかりしている鬼はお前たちか。ももたろうが懲らしめてやる」


 鬼はなんのことだかわかりません。鬼がきょとんとしていると、
 「お殿様はどこだ。手紙を預かっている。届けたいから案内してくれ」


 ももたろうがそう言うので、鬼はお城に案内しました。ももたろうはお城の門番にお殿様に会わせてくれと頼みました。門番は、ももたろうから手紙を預かって、お殿様に届けました。


 手紙を読んだお殿様は、ももたろうを呼びました。
 「ももたろう、ここに何をしに来たのだ」


 お殿様に聞かれたももたろうは、
 「鬼退治です」
と、答えました。


 「おともの犬、悪い鬼はどこにいるのだ。教えてくれ」


 お殿様に聞かれた犬は、ももたろうをちらりと見ました。
 「私の横に立っています」


 それを聞いたももたろうは怒りました。
 「私はももたろうだ。鬼ではない」
 すると、犬はももたろうの足に噛み付きました。


 「おともの猿、悪い鬼はどこにいるのだ。教えてくれ」
 お殿様に聞かれた猿は、ももたろうをちらりと見ました。
 「私の横に立っています」


 それを聞いたももたろうは怒りました。
 「私はももたろうだ。鬼ではない」
 すると、猿はももたろうの顔をひっかきました。


 「おとものキジ、悪い鬼はどこにいるのだ。教えてくれ」
 お殿様に聞かれたキジは、ももたろうをにらみつけました。
 「私の横に立っています」


 それを聞いたももたろうは怒りました。
 「私はももたろうだ。鬼ではない」
 すると、キジはももたろうのお尻をつつきました。


 お殿様はももたろうに言いました。
 「悪い鬼は、ももたろうの中に隠れているようだ。わしが退治してあげよう」


 お殿様は、ももたろうを家来にして働かせました。畑仕事、馬の世話、掃除、食事の用意。ももたろうが逃げ出そうとすると、大きな鬼が追いかけてきて、すぐに連れ戻されました。


 犬と猿とキジは、自分の家に帰りました。でも、ももたろうは今も鬼が島で働いています。心の中に鬼がいるからです。