一寸法師
あるところに、おじさんとおばさんがいました。そう、まだおじいさんとおばあさんになっていないのです。二人には子どもがいませんでした。
「子どもがいないと、年取ってから面倒を見てくれる者がいないねぇ」
「そうですねぇ」
二人は神社に行って、神様にお願いすることにしました。
「神様、どうか子どもをさずけてください」
しばらくすると、二人に子どもが生まれました。ところが、その子どもはとても小さいのです。親指くらいしかありません。二人は早く大きくなれ、早く大きくなれと、たくさん食べさせました。
子どもは、まるまると太って、てまりのようになりました。それで、てまり法師と呼ばれました。ある日、おじさんが畑仕事をしているとき、そばで遊んでいたてまり法師を蹴飛ばしてしまいました。てまり法師は、蹴られたはずみで、遠くに飛ばされて、いなくなってしまいました。
二人は、また神様にお願いすることにしました。
「神様、どうか子どもをさずけてください」
しばらくすると、二人に子どもが生まれました。ところが、その子どもはとても小さいのです。親指くらいしかありません。二人は早く大きくなれ、早く大きくなれと、引っ張りました。おじさんが足を持ち、おばさんが頭を持ち、うんこらしょ、うんこらしょと引っ張りました。
子どもは、七夕の短冊のように、うすっぺらい子どもになりました。それで、短冊法師と呼ばれました。ある日、おばさんが洗濯物を干しているとき、風が吹いて、そばにいた短冊法師を飛ばしてしまいました。
二人は、また神様にお願いすることにしました。
「神様、どうか子どもをさずけてください。あまり手のかからない、すぐに大きくなる子どもにしてください」
しばらくすると、二人に子どもが生まれました。今度は小さくありません。子どもはとても早く大きくなって、三日もすると、大人になりました。大きくなった子どもは、おじさんとおばさんに言いました。
「おじさん、おばさん、私は旅に出て、修行をしようと思います」
子どもは、おじさんとおばさんの家をあとにしました。
「私たちの面倒を見てくれる子どもがいななったねぇ」
「どうしましょう」
二人は、また神社に行きました。
「神様、どうか、私たちの面倒を見てくれる子どもをさずけてください」
すると、神様が答えました。
「子どもに期待をするのはやめなさい」