hitoriの卵焼き

砂糖味、塩味、しょうゆ味、不思議な味。あなたはどれが好きかな。

爪の重さ

爪の重さ


 爪のわずかな重さを感じることがある。
 それは風に飛ばされる小さな羽毛よりは重い。
 
 私はおしゃれにさほどの関心はない。最近は暇つぶしにマニキュアを塗る。そのマニキュアを落とした時、指が軽くなった感じがする。
 こんなわずかな重みを体は敏感に感じ取るんだね。そういえば、爪を切った時も軽くなった感じがわかるよね。
 ネイルサロンでしっかり分厚くマニキュアをした人を見るけど、指がこっているだろうな。疲れているに違いない。
 マニキュアは家事をしていると、すぐに剥げてしまう。だから、剥げないように重ね塗りをする。それが結構重くなるんだよ。ネイルサロンに行かない私でも重く感じるなら、サロンにお世話になっている人は、爪も財布も疲れて、おまけに二時間も潰されるんだね。お疲れ様。

 人間の体の繊細さは爪だけじゃないよ、まぶたも同じ。五十過ぎて、眠そうな顔になる人いるでしょ。まぁ、今は美容整形でなおしているみたいだけど。
 若い時から毎日つけまつげしてたら、まぶたの筋肉のびきっちゃう。まぶたが疲れるんだよ。つけまつげなんて軽いと思っていたら大間違い。まぶたは一日中動いてる。それが長い間に筋肉を伸ばしてしまう。コンタクトレンズもまぶたを疲れさせる。
 腰痛のためのコルセット、一日中つけている生活を続けると、腰の筋肉が衰えてくる。結果的に、腰痛がひどくなってしまう。テレビのコマーシャルなんて、いいことしか言わないんだから、「これいいじゃん」と迂闊に衝動買いなんてしちゃだめ。
 健康にいいからって、サプリだの健康補助の薬だの使っていると、体がそれに慣れてきてしまう。結果、いざ病気となったら病院で処方される薬にも影響がでてしまう。最初から強めの薬を使わないと効かないの。怖いね。
 最近さ、昼のテレビを見ていると、生命保険会社の医療保険と健康食品のコマーシャルばかりなのよ。暇な年寄りが多いのかな。そういえば、去年、駅前のバスターミナルであった女の人、毎日の予定が「十二時からの時代劇、そのあとサスペンス、〇〇〇、〇〇」と決まっているってさ。その時間のターゲットは健康が気になる世代なのね。
 
 重さが変わったことに一番わかりやすいのは髪だね。長い髪をばっさり。軽くなると同時に、髪が浮き上がった感じになる。切った分の髪の重力が消えて、髪が立ったようになる。
美容院を出たときは、しっかりとセットしてくれているからわかんないけど、翌日に髪は爆発ヘア。髪の少ない人は気にしなくていいけれど、人の三倍はあろうかと思える髪を持つ私は、しばらくは歩く大型ウニのようになるのです。

 いなくなって初めてその存在の大きさ、重さを感じるものがある。それは家族。一人でもいなくなると、寂しさを覚える。いつまでも一緒に生活なんてことは珍しいことのようになってきた時代。女の子なら結婚で家を出る。しかし今は自立で家を出る。男も結婚願望がなければ、自立で離れていく。いや、追い出すのだ。男の子は、母親を便利に使う。
 私は家政婦じゃない!とも言えず、かと言ってぬるま湯に浸からせるわけにはいかぬ。いつまでも元気だと思うなよ、今のうちに一人暮らしをしておきなさい。
 話の合う息子がいなくなった時は、火が消えたような生活だった。人と人が互いに磨き合う経験を感じることができる存在だった。私とは違った物の見方を語ってくれる、数少ない存在。もっと話をしておくんだったな。
 
 都会にいると夜中でも明るい。田舎の空とはまったく違う。街灯がなければ、月明りが心地よい。だから蛍がきれいに見える、花火だって最高に美しい。都会のネオンや立ち並ぶ街灯の中で空を見上げても、花火は映えないよね。きっと、UFOが出てもわかんないかもしれない。それは私だけかな。毎日のようにオーブを見ても、光に照らされた落ち葉だと思ってしまうのんびり屋ですから。気がつくまでに数か月かかりました。夜遅くに毎回同じ時間に同じ場所で、同じコースを横切るように落ちる光った落ち葉って変だよね。気がついてからは一度も通らずに回り道をするようにしました。
 一件だけなら家の灯りも夜空の邪魔にならないけど、たくさんの灯りのある街は、遠い山のふもとから見ても、夜の雲まで照らしている。それが都会なんだね。わずかな一粒の雨が河になり、海を喜ばせるように、小さな灯りも都会を作る。
 毎日のなにげない会話が幸せを連れてくるのと同じ。

 爪よ、大切なことを考えさせてくれてありがとう。